星を駆ける列車の窓辺

主に好きなアニメ、ゲームについて書いていきます。

この世界の片隅に

 

実は先日ルパンの映画を観に行った時、時間があったのでもう一本選んだ映画が「この世界の片隅に」。
行ったのがもう先週のことになるので思い出せる場面が少なくなるけど、今の気持ちを文章にしたいと思い、先にこの映画の感想を残します。

 

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 https://www.youtube.com/watch?v=kczb7IJJg0g&feature=share

 

[あらすじ]
昭和19年、広島市にいた絵が得意な少女・浦野すずは、呉に住む青年・北條周作のもとに嫁いだ。
すずは不器用ながらも懸命に暮らしていたが、空襲が度重なり……。

 

 

 

以下、ネタバレ無しの感想。

 

 

 

まず言っておきたいのは僕的には、この映画は戦争映画じゃあない、ということです。

 

戦争を題材にしたアニメ映画と言えば、有名な作品で「火垂るの墓」があると思います。


戦争の悲惨さや無情な世間、その中でひたむきに生きる兄妹を描く傑作です。


しかし、僕は「火垂るの墓」は気軽に見れないし、ある種の覚悟をもって観なきゃいけなくて、いつも再放送の度に気が重くなるんですよね。


あの辛い最後に向かって、着実に前に進む勇気が要るというか。

 

でも「この世界の片隅に」は、僕は気軽に観れたんですよ。


勿論、戦争を描いていることは間違いないんだけれど、そこにはいつも陽気があるんですよね。


それはやっぱり主人公のすずさんの存在かなぁって思います。

 

このすずさんって女の子が、まぁ能天気というか、明るいというか、とにかく場を和ませてくれるんですよね。


水彩画のようなアニメーションも世界をすごく可愛く魅せてくれるんです。それも相まってソフトな口当たりなんですよ。すずさんが何かする度に僕は「ふふっ(●´ω`●)」ってなってました。

 

じゃあ、デフォルメしてるから当時の戦時中の描き方が簡易になってるのかと言うとそうじゃないんです。


戦時中の描写は、多分徹底的に調べているであろうと思っちゃうほど、リアルに詳細に描いていて、そこに世界があるんですよね。
しかも、その描写について一切の説明がないんです。

 

例えば、普通の戦争題材作品では「この頃の食事は、こんな感じのものです!ね?美味しくなさそうだし、戦争中って辛いでしょ?。」みたいなのを、ある種押し付けてくるものもあると思います。


でも、この作品ではそういった強制が一切ありません。


坦々と 食事を作り、食べるシーンを見せるんですよ。作中の人たちも、自然な反応なんですよね。現代から見るとすごく貧しい献立にも、食事を楽しんでいる様子や平常運転感を自然に見せてくれるんです。


そうすると、そういう僕らが初めて見るものだったり、初めて得る知識みたいなものが作中に一杯あって正直初見でパッと理解できないシーンなんかもあるんですけど、それがあることによって、この作品世界が実際にあるように錯覚するんですよ。


「あぁ今、実際の映像を見てるんだぁ。」という気にさせてくれますw。

 

その中で、すずさんが動いているので、もうすずさんが実際にいたような気になってきます。

 

しかし勿論、戦時中が舞台の映画。


そういう描き方がだからこそ、そこへ誇張することのない闇が少しずつ忍び寄ってくる様が、非常にリアルに際立ち、恐怖する。ということもあります。

 

でも最後に僕たちの心に残るのは、前向きな気持ちなんですよね。


戦時中を描きながら前向きな気持ちになれる映画。僕はそう感じました。

 

 

 

ネタバレ無しはここまで!これからはネタバレ有りで書いていこうと思いますので注意してください。

 

 

 

 

 

 

以下、ネタバレ有りの感想。

 

 

この映画を鑑賞した時、僕は何回か涙しそうになったんですけど 「泣いちゃダメだ!」と強く思ったんですよね。


それは何故なのかなぁと観終わった後に考えてみました。


前述したように、 作中のすずさんは辛い顔をしません。

すずさんは和やかに健気に生きているから、大変なことが目に見えたり、不幸なことが起こっても何とか前を向いていこうとするんですよ。


それを見ていたら、「観ている僕が泣いたら、すずさんの意思に背くことになってしまう!」って僕は思いました。

 

そんな中で唯一、感情を抑えられなかったのは、終戦して天皇陛下のラジオが流されるシーンです。

 

それまで、健気に明るく生きているすずさんを見ながら、作中に世界に没頭しているからこそ、戦争が終わった事にすずさんが泣いて怒ることに僕は共感しました。

 

戦争は、早く終わった方がいい。だから原爆が落とされて良かった。なんて意見もあります。


確かに一理あると思うし、僕もこの映画を見るまでは半々の気持ちでした。

 

でもこの映画を見ると、当時の人達の中に終戦の際に怒った人が何故いたのかを理解することが出来た気がしました。

 

この映画は感情移入出来る映画というか、世界に自分が入ってしまう作品ですね。

 

しかし再度言いますが、終わった時の僕の感情は晴れやかでした。


すずさんは作中で、その時その時を楽しんで生きているんです。それが現代の僕らへのメッセージであるようにも思えました。


すずさんに、「今」を生きるんだよ。「今」の連続だよ。って言われているような気がして。

 

ああ僕の祖母や祖母の兄達が生きていたら、この映画を見せたのになぁ。

 

僕の祖母の兄が昔、「戦争が終わって直ぐにアメリカに飛んで金稼いで帰ってきたけど、為替の関係で大した銭にならんかったわぁ。」
なんて事を言ってたっけ。「楽しい事も一杯あったどぅ。」とも。

 

僕は岡山生まれで、親戚一同は広島なのですが、祖母の兄は「戦争を後世に伝える会」って団体をつくって何度も公演をしていました。今は彼の気持ちが少しだけ分かったような気がします。

 

広島の親戚のおばさんは、被災して背中に一面火傷痕があったことを思い出します。「戦争はいけんよぅ。」といつも言ってたっけ。

 

近年そういった戦争を経験した世代が亡くなっていってます。


戦争中、その時のリアルな思い出。

 

忘れたい事

 

忘れたくない事


この映画は、そんな事を彼らの代わりにすずさんが教えてくれる、そんな映画でした。


この映画を観て楽しいと思うか、悲しいと思うか、それは観る人それぞれでしょうが、日本に生きていたら一度は観た方がいい映画だと思います。

 

僕は、前向きないい映画だと思うし、もう一度すずさん達にあいたい。また見たいな。と思う良い映画でした。

 

長い感想でしたが、ここまで見てくれた皆様ありがとうございました!

 

また次回会う時までアデュー!!!